ドクトル・ルチャの19○○ぼやき旅

【第637回】ベルトからマスクへ

 日曜日はおつかれさまでした。『第4回チャンピオンベルトカーニバル』は大盛況でして、研究の成果を思う存分喋らせてもらいました。お陰様でスッキリ。日進月歩、アップデートとかいうけど、ベルトは研究すればするほど新事実と謎が交互に出てくるもの…今回もイベントが決まってからの1ヵ月半くらいで、いくつもの新事実が発覚し、またいくつかの謎で出て来た。そして2023年10月8日の時点で 、1972年に百田家から寄贈された力道山ベルトはカウントしないで「PWFのチャンピオンベルトは4本あった」という結論を導き出すに至った。その詳細はイベントに来てくれた方たちだけにお教えしたことで、ここでは改めて公表しない。ただ、あのイベントをスタートした直後に私は新たな発見と、新しい謎にぶち当たって動揺していた。

純金2号ベルトを広げてみた。

それは73年から77年まで使われたあの純金ベルトを大きなケースから出して、壇上に展示する時、手に持った時の重さである。「えええっ、重い~!」。それは半端でない重さだった。もう一つ展示した三冠ヘビー級選手権に使用された金メッキベルトと比べると、3倍、いや4倍の重さの違いがあった。これは現場でのまったくの予定外の出来事だった。72年下半期に新しいベルトを製作する際、馬場さんの指示で選手、関係者、マスコミが香港、シンガポール、フィリピンなどから金塊が買い集められた。それらインゴットと元子夫人の指輪も溶かしてPWFベルトが造られた。その輝きに会場の集まったお客さんたちは目を見張ったことだろう。私も本物の金は褪せることなくこんなに輝き続けるものかというのを改めて教えられた。これは今まで見たどのベルトよりもゴージャスで威圧感があった。私にはプロレスのチャンピオンベルトの域を通り越した美術品に見えた。

金ピカでズッシリ。革も厚い。

それにしても同じ型で造られたものなのに、金がこれほど重いものだとは思いも寄らなかった。当然、使い勝手が決して良かったとはいえない。あれは馬場さんの腰だからしっかり納まったのであろうと思える。現在の金相場が1g=24kで9724円。それでこれ何キロあるの?の世界だ。このベルトの純度と含有量はどのくらいあったのだろうか。これが2本あったとするなら、それぞれの純度や使用した金の量に違いがあったのだろうか。もう一つ、この金のプレートを支える革の分厚さにも驚いた。厚みが1センチくらいあったと思う。トークショー前に私の頭の中はマジで混乱していた。

現存PWF2号と4号が揃い踏み。

このタイプのベルトが4本あったことは、今回提示した資料の数々と説明で、来場してくれたみなさんにはよくお分かりしただけたものと確信している。『チャンピオンベルトの謎』という本を竹内さんと一緒に作ってから、25年…私の研究はここまで進んだということを今回報告させてもらった次第。馬場さんが生きていたら、何と言うか。意地悪そうな顔をして「フフフ、よく調べたけど、そこはちょっと違うな…」って、わざと惑わすような、煙を巻くような言葉が出た気がする。今回自信を持って出した結論も、今回提示した新資料を上回るものが出てくれば、アップデートされる日が来るのではないかと思う。

ケースに入った三冠ベルト(4号)。

それと金メッキ製とはいえ、今回登場した現存するもう1本の三冠ベルト…この価値の高さも再認識しなくてはならない。ザックリ言うなら82年の馬場vsハンセンはもちろん、レイス、ハンセン、長州、天龍、鶴田に渡って89年に三冠が統一され、そこからもテリー・ゴディ、四天王(三沢、川田、田上、小橋)、ベイダー、武藤敬司、グレート・ムタ、橋本真也、小島聡、太陽ケア、鈴木みのる、佐々木健介、諏訪魔、高山善廣、曙、ジョー・ドーイング、潮崎豪、秋山準、船木誠勝らが巻いて、2013年8月に馬場家に返還された。正確に言うなら81年3月から32年5ヵ月も使われ続けた超働き者だった。泉館長も「使用素材とかは抜きにしてプロレスの歴史的価値ならば純金のPWFベルト以上のものがありますよね」と、1000万円以上の高い評価をしている(PWFの純金&三冠ベルトは、闘道館で今月下旬まで公開展示しています)。

2013年10月に全日本は三冠タイトルを一本化した新ベルトを公開し、それを使用するようになった。だが以後、時折、旧三冠の3本ベルトがお目見えしているようだ。この三冠一本化計画は2006年10月に一度回収され、翌年2月に新調される予定が諸事情で流れている。私の記憶によると、馬場さんが存命の時代にも同様の一本化計画が進んでいた。馬場さんが亡くなる前、90年代の後半だったと思う。それで新しいベルトを造ったものの、馬場さんが気に入らなくて、一本化の話は立ち消えた。その時の「幻の三冠ベルト」って何処へ行ったんだ?前述の06年の時も同じような経緯で元子さんが却下したような…その辺の詳細はよく思い出せない。

さてチャンピオンベルト話はひと段落して、次はマスク。すでに告知してチケットも発売されている伝説のマスク職人ローリン(ミゲル・アンヘル・アギラール)のトークショー&マスク即売会が20日(金)に迫っている。

『ビバ・ラ・ルチャ』も今回で50回。2009年からアレナ新宿ネイキッド・ロフトでスタート。レスラー&OBならば敬称略で申し訳ないけど、北沢幹之、木村健吾、グラン浜田、栗栖正伸、小林邦昭、グレート小鹿、渕正信、越中詩郎、マイティ井上、鶴見五郎、高杉正彦、キム・ドク、新崎人生、(佐山聡)、リスマルク、レイ・ミステリオ。関係者&マスコミならばダン・ウエストブロック、クリスチャン・シメット、新間寿、猪木啓介、大塚直樹、新間寿恒、櫻井康雄、ウォーリー山口、茨城清志、小佐野景浩、小林和朋…番外編も含めてこういう人たちをゲストに招いてトークをしてきた。近年の主戦場は闘道館…。話の面白い方、記憶力のやたらいい方には複数回ゲストで来ていただいた。鶴見さん、リスマルク、櫻井さん、ウォーリー…彼らはこの14年の間に鬼籍に入られてしまった。時の流れを感じざるを得ない。

マエストロ・ローリンと。

そして今回、節目の50回目には「ローリン」。知る人ぞ知る半世紀のキャリアを持つ名マスカレーロ(マスク職人)だ。彼が手掛けたマスクはビジャノス、ブラックマン、ホワイトマン、ブラソス、エル・マテマティコ、スペル・アストロ、フィッシュマン、ロカンボレ、クチージョ、マサクレ、シュー・エル・ゲレーロ、ミスティコ…など、数え出したら切りがない。日本人ならウルティモ・ドラゴン、ニンジャ・サスケ、モモタロウ、SATO、ジライヤ、ランマ…。ローリンは『ビバ・ラ・ルチャ』と銘打ったイベントに相応しいマニアックなスペシャルゲストといえる。即売会はもちろん、いろいろ趣向を凝らした企画を考えているので、平日夜ですが是非お越しください。アレナ・メヒコと同じ“SUPER VIERNES”にアレナ闘道館でお待ちしています。

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