ドクトル・ルチャの19○○ぼやき旅

【第638回】気になる「その他」

  先日の『チャンピオンベルト・カーニバル』ではテリトリー時代のテキサス州の話を時間を掛けてしたが、現在、行われているMLBアメリカリーグ優勝決定シリーズはテキサス対決である。まるで西部劇の決闘のようだ。ヒューストン・アストロズとテキサス・レンジャース(ホームはダラス・フォートワース都市圏のアーリントン)がそれ。プロレスで言うならモーリス・シーゲル→ポール・ボーシュのヒューストンvsエド・マクレモアの→ジャック・アドキッセン(フリッツ・フォン・エリック)のダラスの対決に置き換えられる(現在、レンジャースがいきなり2勝。鉄の爪が炸裂して1本取った感じ)。ヒューストンは西部開拓時代のピストルより命名されたコルト45’sから世界初のドーム球場アストロドームが完成に際してアストロズと改名したチーム。人類初の月面着陸を目指すアポロ計画の指令基地NASAがあることから1965年のチームの改名も新時代の象徴のようだった。アストロノーツ(宇宙飛行士)を縮めたアストロズ…そのシンボルマークをパクってマスクにデザインした男がいる。スペル・アストロである。“白銀の隕石弾”のネーミングは自画自賛の傑作だと思う。

ローリン製のゴムラメのアストロ。

 そのアストロのマスクを作っていたマスカレーロ(マスク職人)が金曜日に闘道館でのトーク&即売会にゲスト出演するローリンことミゲル・アンヘル・アギラールさんである。

「ティファナに天才的な飛び技師がいる」という噂を聞きつけてフランシスコ・フローレス代表がメキシコシティにMVP待遇で招聘した男…それがスペル・アストロだった。アストロは83年11月27日のエル・トレオで中央デビュー(UWA)している。何がMVPかといえば、猪木、アンドレ、ハンセン、藤波らが宿泊するアラメダホテルに彼はスペシャルゲストのような待遇で数ヵ月間、寝泊まりしていたからだ。私が結婚式でそこに泊まっていた時、アストロはフローレス代表が用意した車でブッチャーと一緒に移動していた。先月、イベントでアストロに会って、その話をした。「ああ、最初はアラメダホテルだったなあ。トマスも泊まっていたのを憶えているよ。でも、その後は事務所のあるビルの暗い部屋に移された。その後がソリタリオの家か。懐かしいなあ」と笑っていたよ。もう一つ、聞いたことのない質問した。「おお、もちろん。俺はヒューストン・アストロズのファンだよ」と笑っていた。2敗から敵地でアストロズは巻き返せるか。

先月、メヒコでアストロに会う。

トレオ初登場当時のアストロのマスクはティファナ製かもしれないが、すぐにネッサに住むアルトゥーロ・ブシオ・ペレアに発注したと思われる。それで暫くブシオ製だったが、クウォリティーの高さを求めてローリンに鞍替えし、彼の顔は絶頂期に最高に整った。ローリン曰く「私が最も忙しかった頃、ビジャノスとウルティモ・ドラゴンとアストロだけで作っていれば、正直言って他のマスクには手が回らない…そんな時期があったよ」。それほどこの3人にかかりっきりの時期があったようだ。私がメキシコマット界と照らし合わせたローリンのピークは、ジャスト35年前の88年10月21日、モンテレイでのロス・ビジャノスvsロス・ブラソスとの3マスカラス・コントラ・3マスカラス…この頃だと思う。これはローリン製vsローリン製が6人入り乱れてマスクを剥ぎ合うという史上稀なる戦い…これはどんな腕利きのマスカレーロも経験したことがないであろう。それから2年半後にユニバーサルが旗揚げして、日本にはルチャブームとともにマスクブームが起きる。その主役となったメーカーがローリンだった…。

ビジャノとオロの決戦マスク。

 金曜日のイベント…前半の約1時間を予定しているトークのほうは私の担当なので、時間の許す限りマニアックな質問をぶつけてみたい。意外な選手のマスクを作っていたり、まさかというエストレージャから発注を受けていたり、そんな意外な言葉が出てきそうな予感がする…。もちろん、みなさんからのコアな質問もお受けするつもりです。また、こういう場だから出来るというスペシャル企画も用意しているのでお楽しみに…。後半の即売会については、どういう方法にするか闘道館の泉館長とローリンの間で、いま詰めてもらっている最中。ただ、現時点でローリンから出ている話は、気になるマスクのお値段。それは「1枚2万5千円から、物によっては4万円…この範囲で」とのこと。売りに出されるのは「ビジャノ、ブラックマン、カト・クン・リー、ドクトル・ワグナー(Sr.)、ハラキリ、ミスティコ、ティタン、ローリン、ヘミニス他、約30枚」とのこと。それらが複数枚あるのかは不明…。ここにアストロの名前はなかったけど、「他」というところにも期待したい。その他にフィッシュマン、ブラソス、エル・マテマティコ、ロカンボレ、クチージョ、スコルピオ・ジュニア、シュー・エル・ゲレーロ、マサクレ、ブルー・デモン・ジュニア…はあるのか。あるいはそれ以外の珍しいものもあるかも…。それは私もわからないので、当日を待ちましょう。私自身、ローリンとの1ヵ月ぶりの再会を楽しみにしている。一期一会…みなさんとローリンとの出会いが素晴らしいものになることを期待しています。

このスマイルでお待ちしています。

-ドクトル・ルチャの19○○ぼやき旅