ドクトル・ルチャの19○○ぼやき旅

【第611回】プエルトリコの星

 次号の『Gスピリッツ』が脱稿して、そのあとWBCにハマっている。日本戦だけでなく、出来るだけ全試合を視聴中(J-SPORTS 1・2・3・4やPrimevideoを駆使すると全てカバーできる)。日曜日など未明から深夜まで8試合も観てしまった。日本は4連勝して準々決勝で16日のイタリア戦だね(馬場vsサンマルチノか…)。メキシコは初戦タイブレークでコロンビア(ティグレ・コロンビアーノ?)に痛い星を落としたけど、アメリカに11-5で完勝した。スタンドではマント付きのサント男やワグナー男が応援していた。本日イギリス(ビル・ロビンソン?)、明日カナダ(ジン・キニスキー?)に勝てば得失点差でベスト8の可能性は大(大量得点と無失点を願う)。頑張れ、サント!

死のグループといわれるラテン3強が揃ったプールD。ベネズエラ(サイクロン・ニグロ?)がプエルトリコ(ペドロ・モラレス?)とドミニカ(ケンドー?)に連勝した。スター軍団のベネズエラは強い! 私は決勝に進出するのではと予想している。昨日、プエルトリコvsイスラエルの試合を観ていたら、プエルトリコの応援団にジ・インベーダーの白いマスクをした男がアップで抜かれていた!これには驚いた。今時、こんな所に出てくるということは、インベーダーって「プエルトリコのサント(英雄)なのか!?」と思った。

インベーダー1号はホセ・ゴンサレス。

インベーダー1号の正体はホセ・ウエルサス・ゴンサレス。1988年にブルーザー・ブロディを刺殺したことで有名になったが、プエルトリコでは素顔でもマスクマンでもヒーローだったことは確かだ。インベーダーに変身したのはWWCが出来た73年頃。プエルトリコで数多くのタイトルを手にしたが、プエルトリコ・ヘビー級王座に至っては79年から2001年の間に12回も奪っている。それはあのカルロス・コロンの記録よりも上であり、息が長く戦ってきたビッグネームであったことが伺える(06年10月引退)。75年と77年に全日本に素顔のホセ・ゴンザレスで来日し、82年4月に新日本にやって来た時はタイガーマスクとも試合をした。あれがマスクを被ったインベーダーだったら、もう少し見栄えしたのになあと思う。翌87年7月に初めてインベーダー1号として全日本に来て、その1年後に事件を起こして、以後敬遠されてしまう。引退試合から17年…77歳のゴンサレスは今なお、ご健在の様子…。

タイガーvsホセ・ゴンザレス。

インベーダー2号の正体はロベルト・ソト。マヌエル・ソトの実弟だ。今回のWBCではプエルトリコの一塁をネフタリ・ソト(横浜DeNA)が守っているし、ドミニカの最強打者フアン・ソト(パドレス)もいる。ソトって、カリブ諸国には多いお名前なのだろう(メキシコにはあまりいない名前だなあ)。75年にはフロリダとサンフランシスコで1号と組んで世界タッグ王座も手にしている。オレゴンにも遠征しているので、守備範囲は広い。ロベルト・ソトは素顔で新日本に3度来日した後、国際プロレスに81年正月にインベーダーとしてやって来た。数日遅れて来日し、ルー・テーズ杯争奪予選リーグでは負け越す。マスカラスもどきのマスクで試合したため、怪しさだけが目立った。でも、この1号&2号のコンビは79年にWWC世界タッグ王座をめぐってザ・ファンクスと大抗争を展開している。シングルプレイヤーというよりはタッグ屋だったのだろう。

国際に来たインベーダー(2号)。

インベーダー3号の正体はジョニー・リベラ。79年12月のMSGで藤波辰巳のWWWFジュニアヘビー級に挑戦したのが我々の初見であろう。2号に替わって1号のパートナーとしてスペル・メディコスと抗争をしているが、3号はWWC世界ジュニアヘビー級王者としての活躍が顕著だった。ただ83年1月にペロ・アグアヨがプエルトリコに乗り込んで3号から同王座を奪うと、3号はベルトを追うようにメキシコ入りしている。エル・インバソール(インベーターの意)の名でルードとして試合をし、マノ・ネグラとのマスカラ戦(2月20日=トレオ)をやって敗れマスクを剥がされてしまう。でも母国ではまるで何事もなかったようにマスクを被り続け、アグアヨ→アニバルと移動したジュニアヘビー級王座を奪還し、88年まで7度も同王座を死守している。

3号はWWC世界Jヘビー級王者の常連。

日本には77年2月にジョン・リベラの名で初来日していて、郡山で一度だけマスカラスとタッグを組んでいる(マスカラス&ロビンソン初合体の翌日)。86年夏の全日本に再来日しているが、全くいいところがなかった。現地ではヒーローなのだが、外へ行くとその名(侵略者)の如く扱いが悪い。彼らに限らずだが、ガイジンは使い方の問題だろう。インベーダーはタッグで呼ぶべきだったかも…。それと亡くなった鶴見さんがこんなことを言っていた。「プエルトリコは、同じラテンでもメキシコと違ってマスクマン王国じゃないですよ。アメリカの影響が強いからです。現地のレスラーたちのほとんどが素顔の選手。だからマスクマンと言ったらメディコかインベーダーくらい。特にインベーダーは人気ありますよ」。なるほど…だからメヒコの応援スタイルを真似るとインベーダーのマスクに、となるのか…。

そのプエルトリコ代表チームはあれよ、あれよとイスラエル打線を押さえ込み、10-1の8回コールドでWBC史上初の完全試合(4人の投手リレー)を達成してしまった。当然の如くあのインベーダー男は大狂喜していた。後年のインベーダーは白マスクに黄色に縁取りになってしまったが、オリジナルのインベーダーは、白マスクに濃い青と赤のフチドリ…つまりプエルトリコ国旗のカラーである。だからインベーダー男があのマスクで応援していたのだろう。国際に来たインベーダーが(マスカラスの)トレードのデザインに額が「M」ではなく、☆のマークだったのも、今から思えばプエルトリコ国旗を強調したかったのだろう。マスカラスを真似したダサいマスクと、あの当時は馬鹿にしていたけど、それに気づくのが42年遅すぎたよ。プエルトリコ代表が準々決勝に勝ち上がるには、16日朝のドミニカ戦の勝敗にかかっている。その時、スタンドに再びインベーダー男が登場するか、増殖するか、注目したい。

本当は『GスピリッツVol.67』の特集について書こうと思ったけど、インベーダーが現われたことで大脱線してしまった。特集のことはまた来週…。

-ドクトル・ルチャの19○○ぼやき旅