ドクトル・ルチャの19○○ぼやき旅

【第568回】鳥取の追憶 (2)

 先週に続いて、鳥取のプロレス話をしたい。今回の西日本の旅の途中で、「ああ、ここ懐かしい」と思わず立ち寄った鳥取産業体育館。最後に私がここに取材に行ったのは2002年10月31日の新日本。前日が津山大会で中国山地を越えて鳥取に入った。この日、星野総裁のインタビューをオファーしていたので、よく憶えている。星野さんのヒールキャラの原点は海外武者修行時代にあるということを聞き出すための直撃取材だった。

星野さんの取材は鳥取でやった。

 その日のメインは何だったのか改めて調べたら、予定カードが突然変更されていて、魔界1号&2号&安田忠夫&柳澤龍志vs蝶野正洋&天山広吉&永田裕志&棚橋弘至の8人タッグ。中身は全然覚えてない。それにしても、あれから20年も経ってしまったのか…って感じ。金本浩二が36歳の誕生日で、控室でプレゼントされたケーキでT2000のメンバーから祝福されていた(そんなこともすっかり忘れている)。とにかく星野さんにインタビューしたということしか鳥取の記憶がない。

 この県立の産業体育館は1981年4月1日にオープンしている。係の方にお聞きすると「国体(85年)に先駆けて造ったんです」。ここは鳥取市においては3つ目の体育館で、最初の体育館は61年に竣工した市体育館(市立と書かれたものもあり、正しい名称は不明)。2つ目の体育館は74年に東町に出来た市民体育館(中央体育館という記述もある)。ここはつい最近、老朽化のために閉鎖されている(2020年12月28日)。81年の竣工の産業体育館は今も現役だ。係の方に頼んで館内に入れてもらったが、内部は改装されたようで、まだまだ現役でやれそう。改めて体育館の周囲を歩いてみたが、「建物が広くて大きくて頑丈そう」というのが印象。県庁所在地の体育館としては、かなり大きい類だろう。引いても、引いても、カメラのフレームに建物が入らなかった。ただし、外観のコンクリートは年相応にくたびれた感じ。今は鳥取市の中心地から4キロ西の布勢の丘の上にあるヤマタスポーツパーク(県立布勢総合運動公園)の中に県民体育館が出来て、そこが鳥取の最新アリーナとなっている。ただし、プロレスの興行は便の良さから産業体育館を使い続けているようだ(サブアリーナもある)。

「こんな大きいかったっけ!?」。鳥取産業体育館の外観と内部。

 産業体育館での最初のプロレス興行は81年8月31日の新日本。メインは猪木&長州&ストロング小林vsスタン・ハンセン&上田馬之助&バッドニュース・アレン。セミがディック・マードックvsタイガー戸口、その下で藤波&タイガーマスクvsエル・ソリタリオ&ピート・ロバーツをやっている(翌日が米子市民体育館)。新日本は82年に3月と11月に2回鳥取産業体育館でやっている。3月28日大会のメインは猪木&藤波&キラー・カーンvsジ・アウトローズ&ドン・ムラコ。ナント、この12日後に全日本がこの産業体育館を初使用していた!

それは『第10回チャンピオンカーニバル』第20戦(4月9日=テレビマッチ)。この日は公式戦の天王山のような大会で、ジャイアント馬場vsジャンボ鶴田の師弟対決がメインだった(30分フルタイムドロー)。他にブルーザー・ブロディvsテッド・テビアス、ビル・ロビンソンvsモンゴリアン・ストンパー、天龍源一郎vsマイティ井上など好カードが組まれている。これが鳥取プロレス史における最高カードだったのではないかと思われる。ちなみに全日本では97年のチャンピオンカーニバルでスタン・ハンセンvsゲイリー・オブライト、三沢光晴vs田上明というカードもあったことを付随しておこう。

鳥取で実現した馬場vs鶴田の師弟対決。

 新日本は市民体育館時代の74年4月23日、『第1回ワールトリーグ戦』で猪木vsマサ斎藤、坂口vs星野という公式戦があったが、大した注目カードではなかった。昭和の黄金時代に鳥取でもタイトルマッチが行われていた。鳥取は鳥取でも鳥取市ではなく、米子市民体育館。新日本は80年9月22日に坂口征二vsラリー・シャープの北米ヘビー級選手権を敢行した(セミだった)。この翌日が因島(広島)で、翌々日が鳥取市という強行スケジュール。さらにその翌日の最終戦が広島県体育館(例の猪木がハンセンに掟破りのラリアット放ったNWF戦)。この時、新日本一行は4日間で山深い中国山地を2往復するというハードなサーキットをしていたことになる。

米子で坂口が北米ヘビー級王座をV3。

この北米ヘビーが鳥取県下で初のタイトルマッチと思いきや、それより9年前に同じ米子市体育館で選手権試合があった。やっぱ国際プロレスだあ…。それは71年9月16日、レッド・バスチェン&ビル・ハワードvsストロング小林&サンダー杉山のIWA世界タッグ選手権。2週間遅れで録画放送された大会で、1-1からタイムアップ…ガイジン組が初防衛している。恐らくこれが鳥取県での初のタイトルマッチだったはずだ。地味な県には地味なタイトルマッチが割り当てられるという感じか。とはいえ、県内のライバル都市である米子にタイトル戦を持って行かれたのは、鳥取市のプロレスファンは悔しかったはずだ。

ところで話は全然違うけど、鳥取市はカレールウの消費量がずっと全国1位だったの知っていますか(先日新潟市に抜かれて2位に転落)。なぜ上位にいるかという理由は、米どころであること、砂丘などでラッキョウが採れること、女性の就職率が高いことが挙げられるのだとか。主婦が就職していると、作り置きのカレーが便利だからである。「カレー王国」を自称する鳥取の「カレー食堂ボヌール」で私は自慢のカレーを食しながら、他にいつ鳥取にプロレス取材に来たのか思いを巡らす(地味な町のためか、どうしても思い出せない…)。市内ではいつからか毎月「0」の付く日はカレーを食べようというキャンペーンもしているようだ。チラッと調べると「0」の付く日にプロレス興行はない。「プロレスを観に行かずに家カレーを食べろ」ということか…などと思ってしまう(かく言う私は今晩も日曜日に作った作り足しのカレーです)。 

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