ドクトル・ルチャの19○○ぼやき旅

【第668回】親子3代の連立方程式

土曜日のトークショーは無事終了しました。ご来場いただいたみなさま、お疲れさまでした。業界初のフリーカメラマン・原悦生氏のディープなトークにご満足いただけたでしょうか。私も改めて「この人、半端でない。すごいなあ」と感心した次第です。世界中で、これだけの経験、体験をしてきた人って、なかなかいないと思う。この人と一緒にいい時代にいい仕事が出来たことを改めて誇りに思いました。次号のGスピリッツでの私の取材でも原さんがカメラマンとして同行してくれて、素晴らしい作品に仕上がっていますので、楽しみにしてください。

原さんのトークはとても深かった。
ダービーの指定席からの眺め。

今回は青春時代、原さんがアマからプロのカメラマンになっていく過程と、フリーとして独立していく様子、メキシコとの関わりを深堀して話してもらった。もし次回があるとするならば、どの国の体験談をしてもらおうか…今から楽しみである。また「ルチャに限らず、自分が撮ったメキシコの文化、歴史、風景を集めた写真集も企画中なのでお楽しみに」と原さんが次なる作品作りを予告してくれた。それは凄そうだ…期待したいです。

さて日曜日は東京競馬場で「第91回日本ダービー」を息子と一緒に指定席で観戦。快晴で初夏の風も涼しく、ターフの緑は美しく輝いていた。私は1年間、この日のために生きていると改めて確信する。2021年に生を受けた7906頭のサラブレッドにとって一生に一度の晴れ舞台…7906分の18頭で、私がちょうど1年前に選んだ馬(ゴンバデカーブース)がやっとのことで晴れの舞台への出走に漕ぎつけたものの、残念ながら馬群にのまれて13着。それにしても7万8000人の大観衆の声援って半端でない。そんな中、インをすくって勝ったのは9番人気の大穴ダノンデサイル。鞍上は56歳、武豊を抜いて史上最年長G1ジョッキーとなった横山典弘。彼の三男・横山武史(25)が騎乗するアーバンシックは11着。G1をすでに6勝している武史。これまでダービーで2度僅差の2着になっているものの、ダービーに5回騎乗していてまだ勝てていない。そこをいくと父親の典弘は今回でダービー3勝目である(武豊が最多の6勝)。典弘の長男・和生(31)もジョッキーで、G1を5勝しているが、今回のダービーには騎乗してない。これまでのダービーで和生は2度しか騎乗機会がなく、4着が最上位(ベラジオオペラ)である。

56歳横山典弘のフライングディスマウント(撮影:近藤直也)。

典弘の兄・横山賀一も元JRAのジョッキーで、現在は競馬学校の教官をしている。彼らの父・横山富雄は60年代から80年代前半に活躍した名ジョッキーであった。メジロタイヨウ(1969年)、メジロムサシ(71年)で天皇賞を勝利した、私も応援していた職人肌の騎手。富雄は他にニットウチドリで桜花賞(73年)、ファイブホープ(78年)でオークスは制しているが、日本ダービーは80年のファイブダンサーの8着が最上位だった。まあ、ダービーを獲ることがいかに難しいかを富雄は典弘を背中で教えたのだと思う。私は親子3代の横山ファミリーを応援してきたことになる。それって50数年競馬を観てないと出来ないこと。プロレスやルチャの世界も同じで、3代目、4代目を観るためには途中で放り投げないで継続することこそ大事…ということなのだろう。富雄→賀一・典弘→和生・武史と繋がる横山3代…その中で56歳の典弘が一番優れた結果を出している(G1級33勝)。馬券をすって、とぼとぼと歩く私は「横山3代に当てはまるようなルチャファミリーは誰だろう」など考えながら次なるPOGドラフト会議の会場へと向かった。来年のダービー馬をスカウトする最重要会議である。その前に横山3代にぴったり該当するルチャドールを思いつく。「アル・アメスクア(横山富雄)→アルフォンソ・ダンテス(横山典弘)→アポロ・ダンテス(横山武史)&セサール・ダンテス(横山和生)」である。この中でトンケ(戦車)ことアルフォンソ・ダンテスが実力的と人気的に最上位であること間違いない…つまり横山典弘がダービーを3度勝ったように、アルォンソ・ダンテスはメキシコマットの頂点ともいうべきNWA世界ライトヘビー級を5度も獲得しているからだ。

アル・アメスクア(左)と息子のアルフォンソ・ダンテス。
アポロ(左)とセサールのダンテス兄弟。

誰にもきっとすごいと言われないであろうこの連立方程式(?)を解いた時、“馬券は外したけど、今日の俺は冴えているなあ”と至極満足気に会議に臨むことが出来たのである。この夜、4時間に及ぶ会議で指名した16頭の中に来年のダービーはいるだろうか…そして来年のダービーでは、どんなドラマが待っているのだろうか。長いダービーウィークは終わった…。

-ドクトル・ルチャの19○○ぼやき旅