先週は腹痛で緊急搬送され、腸閉塞のために入院していたので、コラムはお休みさせてもらった。前日、食べなれない健康食を食べて腸に詰まってしまったのが原因のようだ。病院では鼻に管を通され点滴を打たれて絶食。やることがなくて『シッシーの国際プロレスLOVE』第2回のテープをおこしながら原稿を早朝から消灯時間までコツコツ書いていた。救急車が来る前にパソコンを用意して持って行って正解だった。自分で言うのも何だけど、次の穴倉氏のインタビュー…1回目以上に面白いよ。お陰様で元気になって退院し、日常に戻る。退院の翌々日、『メキシコ観光』の営業マネージャーの伊藤正一さんがわざわざ東京~メキシコシティの航空チケットを持って自宅まで来てくれた。9月の連休あたりは、航空券も高いので、私は同社を通じて早々に予約を入れておいたのだ。コロナがあったために6年ぶりのメヒコ…久しぶりに私のチャンネルがMEXに入った感じだ。
『メキシコ観光』とは1968年のメキシコシティ五輪の際に現地に開設した日本人向けの観光会社。私もメキシコシティからグアダラハラやモンテレイへ小旅行する時に何回か航空券やホテルの手配などでお世話になったことがあった。伊藤さんはユニバーサル時代からのルチャファンで、それが高じて、後年『メキシコ観光』の東京事務所に入社。彼は「闘道館」でやった私のメキシコ関連やマスク関係のトークイベントにも何回か来てくれていたという。今回のアニベルサリオ観戦ツアーを企画したのが伊藤さんで、お話するとマスクの事とかルチャドールのこととかやたら詳しかった。私が普通に話していてわからない選手はいなかったし、当然ながら現地のプロレス事情には詳しい。言い換えれば、彼もドクトル・チルドレンと言っていいかもしれない。
『メキシコ観光』は今まで近畿ツーリストやJTBなど日本国内の大手ツアー会社とタイアップして現地でのコーディネイトを担当していた。その実績から安部総理、岸田総理などのVIPから芸能人、大企業まで、いろんな形でのメキシコ訪問の際のアテンドをしている(だから安心…)。メキシコは世界第6位の観光大国なので、もちろん、通常のツアー客が普段のお相手…つまりメキシコを観光するための天から地をすべて知り尽くしたスペシャリストの会社と言っていいだろう。そんな『メキシコ観光』が日本からの単独ツアーの免許を習得し、企画したのがこのアニベルサリオ観戦ツアーということである。そして私は、現地でこのツアーのお手伝いすることになる。私の人脈やアイディアを投入して面白いツアーに仕上げられればと思う。(ツアー詳細はこちらから)
すでにルチャ・リブレ90周年記念興行=アニベルサリオ90(9月16日)のチケットは先行発売されていて、物凄い勢いで売れている。私が現地に聞いたところによるとリングサイドは完売状態で、もう全体の8割以上の席が売れて無いとか。大事な記念大会なので普段の興行の数倍の価格だというのに、カード発表前でこの売れ行きって、かなり異常なこと。先週あった会見でメインはドラゴン・ロホ・ジュニアvsテンプラリオのマスカラ戦に内定(他にウルティモ・ゲレーロとアベルノのカベジェラ、ボラドール・ジュニアvsアンヘル・デ・オロのカベジェラ戦も内定)。私的にはオクタゴンvsアトランティスvsフエルサ・ゲレーラの三つ巴のマスカラ戦を熱望していたけど…。今年ずっと抗争が続けられてきたこれらの発表カードで現地のファンたちは大満足の様子。それならそれを楽しもうじゃないか…。
8月12日、アレナ・シウダ・メヒコで行われるAAAの祭典『トリプレマニア31』のカードは、当初ブルー・デモン・ジュニアがマグニチャーター航空のボーイング737-300機に自らのブルーのマスクのラッピングをしたので、マスクを懸ける大勝負に出るのかと思われた。過去にAAAと同航空会社との提携でドクトル・ワグナー・ジュニア、サイコ・クラウン、ビジャノ4号らが同機に自らのラッピングをして機長に扮するプロモを撮った後にマスカラ戦に臨んだからだ。でも今回は違ったね。デモンがギャラで駄々をこねたのだろうか(まあ、性格があんまりよろしくない…)。結局、決定カードのメインはサイコ・クラウンvsサム・アドニスvsエレ・ア・パークvsルーシュの敗者1名マスク剥ぎor断髪。まったくの期待外れのカードだったので、余計CMLLの創立記念にかかる現地のマニアコたちの期待が膨らんでいるようだ。
そんな異常な前売り状況のアニベルサリオだが、リングサイドのいい席を『メキシコ観光』はツアーのためにしっかり押さえてあるというから手回しがいい(今の状況で、これは強い!)。私は私でCMLLオフィスに取材申請を出してある。とにかく90周年の節目の大イベントだから何事も早めに動くことが必要だ。CMLLやルチャ・リブレのファンに限らず、世界最古プロレス団体の節目の90周年には注目してもらいたい。これは日本で観るルチャ系イベントとは出し物、演出、体感が全く別物…それもアレナ・メヒコ超満員のアニベルサリオだから超特大級のカルチャーショックに襲われることは間違いない。確かにコロナあけの北米行きのエア代が軒並み高くなっているけど、こういうチャンスは滅多にあるものではないから、是非、ご参加を願いたい。一生の記念になると思いますよ。
2015年9月、アニベルサリオ82の直前、アレナ・メヒコのオフィスを取材で訪れ、サルバドル・ルテロ・ロメリ(Ⅲ世)現CMLL代表に取材する。「少なくとも8年後の90周年の節目まで来ますので、その時は取材協力をよろしくお願いします」と笑いながらも伝えてあった。今回はそうお頼みした約束を守る時が来たというべきだろう。その取材の際、ロメリの横に終始いたのが長男(ルテロ家直系のⅣ世)マティアス・ルテロ・コチェンだった。次期CMLL代表といわれるマティアスは、まだ大学生だった(当時21歳)が、父親の許、すでに事務所では見習い業務をしていた。メキシコでは彼の存在は伏せられていて、Gスピリッツの第39号で初公開させてもらった。父親の躾が素晴らしいためだろう、実に品のいい爽やかな好青年だった。私は彼に「あなたが代表になっているであろう100周年の時も、取材許可をお願いしますね」と伝えた。あれから8年…マティアスは29歳になっているはずだ。
WWEのマクマホン親子が三代でプロレス業務から撤退した今、四代目の背中も見えて来たルテロ家が築き上げたEMLL→CMLLは、この先も世界最古最長のプロレス帝国として独走しそうだ。私は“今度の90周年を最後のメヒコ行きにしようかなあ”と思っていたけど、マティアスの「100周年ですか、OKですよ。お待ちしています」という笑顔を思い出した。だからあと10年、2033年まではドクトル・ルチャを続けなければならないと思い直す。今年の90周年をクリアして、次なる目標に100という目標へ…。それまで元気でいなければならない。もう救急車で運ばれないように健康に気を付けて元気で過ごさないとね…。