ドクトル・ルチャの19○○ぼやき旅

【第750回】WBCと次号予告

 WBCと言えば、私にとって「World Boxing Council(世界ボクシング評議会)」のことを指す。1963年にWBAのやり方に抗議する形で始まったWBCは、66年に独立した。当初、日本ボクシングコミッション(JBC)はWBCを認めなかったけど、国外での世界戦は別であった。関光徳は66年8月、エル・トレオでWBCの世界王者ビセンテ・サルディバルに初挑戦。69年7月にファイティング原田は敵地シドニーでWBC王者ジョニー・ファメションに挑戦。ダウンを奪って勝利確定と思われたが地元判定で敗れ三階級制覇成らず涙を呑んだ。私もゴングを読んで原田の無念に歯ぎしりをするとともに、WBCという組織の存在が強く強くインプットされる。ファメションvs原田の再戦が叫ばれる中、世論に押されてJBCは遂にWBCを認め、70年1月にリマッチの日本開催が実現(ダウンを奪うも原田14回逆転TKO負け)。テレビの前で正座をして観戦していた私は原田が場外へ叩き出されたシーンにショックを受ける。ファメション憎しと思ったが、『ゴング』誌の記事で、原田の強さをリスペクトしたファメションが愛犬に「ハラダ」の名前を付けたと知り、ホッコリした。同年4月に“精密機械”沼田義明はフィリピンのレネ・バリエントスから世界ジュニアライト級(現・スーパーフェザー級)王座を奪い、日本人初のWBCチャンピオンになる。柴田国明、ガッツ石松、大熊正二、ロイヤル小林、中島成雄、渡辺二郎らがCの王者となる。2団体時代のWBCチャンピオンのレジェンドにはリカルド・ロペス、張正九、ミゲル・カント、ルーベン・オリバレス、カルロス・サラテ、ウィルフレッド・ゴメス、サルバドル・サンチェス、アレクシス・アルゲリョ、センサック・ムアンスリン、ホセ・ナポレス、カルロス・モンソン、マービン・ハグラー、ボブ・フォスター、モハメド・アリ、ラリー・ホームズらがいる。

WBC王者ファメションに連敗した原田。

 こうしてWBCはWBAとともにボクシング界の二枚看板となり、プロレスならばNWAとAWAみたいに並び立った。NWAの加盟国(実際は国でなくプロモーター)はアメリカ、カナダ、メキシコ、オーストラリア、韓国、プエルトリコ、ニュージーランドなど極わずか…(会員は最大時に39名)。これと一概に比べられないが、本部がメキシコシティのWBCの加盟国は160を超え、老舗のWBAを抜いた。

WBCは世界的なブランドに…。

 さて、野球のWBC(World Baseball Classic)が2006年にこの名称で開催された時に世界中のボクシング関係者とファンたちが違和感を持ったのは当然であろう。40年近く慣れ親しんできた団体名が大会名とはいえ、こうも簡単に乗っ取られてしまうのか?とは思いもしなかった。プロレスのWWF(World Wrestling Federation)が世界自然保護基金のWWF(World Wide Fund for Nature)に抗議されて改名したように、故ホセ・スレイマン会長はなぜ訴えなかったのだろうか。バックが莫大な資金力を持つMLBだったから敢えて喧嘩しなかったのか…。それでも未だに違和感は消えない。と言いながらも野球のWBC2026に熱中している私がいる(NETFLIXでほぼ全試合チェック)。我らがエル・サムライ(侍ジャパン)はレッカ(チャイニーズタイペイ)、キム・イル(韓国)、ロイヤル・カンガルーズ(オーストラリア)を破って1位でマイアミでの準々決勝のチケットを手に入れた。昨晩はホースト・ホフマン(チェコスロバキア)も破って全勝。準々決勝と準決勝で対戦が予想されるのがサイクロン・ニグロ(ベネズエラ)とケンドー(ドミニカ)。どっちになるかは12日の午前中の両国最終対決で決まる。

ドミニカ国旗入りのケンドーのマスク。

 やはり気になるのは、やはりメキシコ(最高位は前回大会ベスト4)。メヒコは…やっぱミル・マスカラスとしておこう。予選リーグではビル・ロビンソン(イギリス)とイワン・ゴメス(ブラジル)に快勝した。イギリス戦を観ていたら最初にホームランを打ったナチョ・アルバレス・ジュニア選手がホームインするとチープな応援マスクを被るというセレブレーションがあった。しかし、それ以降はマスクではなく、チープなソンブレロを被るセレブレーションに変わってしまった。このプールBの会場はヒューストンなのでメキシコ人がいっぱい。特にブラジル戦はメキシコ人客によって満員になり、アメリカ戦はアメリカ人よりも遥かに“メキ”が多かった。そしてどの試合でもサント、ブルー・デモン、ウラカン・ラミレス、レイ・ミステリオ、ドクトル・ワグナー・ジュニア、ブルー・パンテル、オクタゴン、ティタンなどのマスクを被って応援するファンがカメラに抜かれる。その中に鮫口のマスカラスとエル・メヒカーノ(前身はアルコン78)を被った男はセンスがいいと思った。どっちのマスクも、もともとメキシコ国旗のカラーだし…特にエル・メヒカーノは名前もキャラもメヒコそのものだからね。ただ単にマスクを被っている奴とは違って、ルチャドールの名やキャラまで分かった上でマスクを持参したルチャファンであることがうかがえた。そうした客席のマスクマンたちの姿を見た初戦の時の解説者の齊藤明雄(71歳)と二戦目の時の解説だった高津臣吾(58歳)の口から「僕らの世代でメキシコのプロレスと言えば、ミル・マスカラス。スカイハイですよね」「やっぱりメキシコのマスクマンはミル・マスカラスでしょう」の嬉しい一言が飛び出した(思わずニンマリ…)。

MMは超人軍団アメリカに敗れる。

 さて、昨日マスカラスは、このプールB最強の敵ハルク・ホーガン(アメリカ=2017大会優勝)と直接対決。アアロン・ロドリゲスさんは米国主砲アーロン・ジャッジのアックス・ボンバーを喰らってあと一息…3-5で敗れる。これでMMは明日12日の最終戦のvsブルーノ・サンマルチノ(イタリア)との一騎打ちで決勝ラウンド進出を決めに行く。無傷のブルーノはMLBプレーヤーも多数いる欧州野球の強豪なので油断大敵だ。ホーガンの準々決勝進出は決定し、残り一枠は仮面貴族か、人間発電所か…1975のWWWF対IWAは、ここで決着か。

MMは人間発電所に勝てるか。

 準決勝でホーガンとマスカラスorブルーノとぶつかるのが死のグループ、プールA。ここからどこが勝ち上がって来るか。昨日、ペドロ・モラレス(プエルトリコ)がコナン(キューバ)を下して準決勝へ進出。もう一枠はコナンが有力だが、ジン・キニスキー(カナダ)が最後にモラレスとコナンに連勝すれば逆転進出もあり得る。ちなみにこのグループの会場になったプエルトリコ・サンファン市のエスタディオ・ヒラム・ビソーンは1962年開場の同国最大の球場。1983年9月にカルロス・コロンがここでWWCが20周年のアニベルサリオをやって3万4000人強を動員している(メインはアンドレvsブッチャー、セミがレイスvsコロンのNWA戦、他にマスカラス兄弟vsインベーダーズ、フレアーvsモラレス、ドリーvsトンガ…)。カリブの暑い日差しを遮るスタンドのギザギザ屋根が特徴だ。現地へ派遣したラウル・ゴメス・モリーナ・ジュニアやジミー鈴木通信員から送られて来る写真をよくチェックしたものである。WBCでは2006年と09年の予選でもこの球場が使われたが、久々にあの屋根を見て懐かしく思ったよ。

ギザギザ屋根での20周年記念大会。

メインはブッチャーvsアンドレだった。

 来週の17日にはマイアミで決勝戦がある。そこにエル・サムライはいるのだろうか…。私は準決勝でケンドーに敗れてしまうのではと予想している。もしそこを突破した時の決勝の相手はホーガンが最有力だ。その時には舌を出さないでほしい。もしホーガンを準決で倒して決勝へ進むとしたらモラレスだろう。マスカラスの決勝進出はかなり厳しいと思うが土壇場のMスピリッツを発揮できるか…。さて、いかなる結末に…(それよりかNETFLIXは元の10倍以上取ったよ)。

1976と言えばアリvs猪木。

 そしてあと2週間後、25日(水)はGスピリッツVol.79の発売日。表紙とコンテンツを公開しましょう。特集は「1976 昭和51年」。私は大学2年生。今から50年前、アナタは生まれていましたか。アナタは何歳でしたか…。

[特集]
1976
昭和51年のプロレス

[証言-新日本プロレス編]
舟橋慶一 元『ワールドプロレスリング』実況アナウンサー

巻頭で舟橋さんに4時間インタビュー。

[証言-全日本プロレス編]
原章 元『全日本プロレス中継』プロデューサー

[証言-国際プロレス編]
田中元和 元『国際プロレスアワー』チーフディレクター

[座談会 三者三様-拡大版]
昭和51年の勝者は、新日本か全日本か?
門馬忠雄×清水勉×小佐野景浩

[書籍刊行記念インタビュー]
武藤敬司
「外国人レスラー」と「海外のプロレス」を語る【前編】

武藤敬司の選集も絶賛発売中。

[インタビュー]
山崎五紀
「全女のプロレス」とは何か?【前編】

[考証]
ルチャ・リブレの起源を紐解く
【後編】初の団体対抗戦は、どこまでがリアルだったのか?

[連載]
第二次黄金時代の力道山
【第4回】「流血ショック死事件」と「校庭プロレス」

[アリーバ・メヒコ]
ドレル・ディクソン
ジャマイカ出身の“黒い弾丸”
その輝かしいスター街道を辿る
【後編】苦難を乗り越えて、闘魂のリングへ

[現地リポート]
ドクトル・ルチャのメキシコ道中記
【後編】ドス・カラスの案内で、3兄弟の生家を訪問!

[原悦生の格闘写真美術館]
第79回「舟橋慶一」

楽しみにしていてください。
私はまたブルー・デモン号と一緒に旅に出ます。故に18日と25日のこのコラムは休む予定です(気が向いたら旅先で何か書くかも…一応、覗いてみてね)。

-ドクトル・ルチャの19○○ぼやき旅