先週は道南の津軽海峡を望む福島町、松前町へ行った話を書いた。福島町の新聞配達員を殺害したキラーベアが駆除された。私が福島町に入り、「総合体育館は何処ですか?」と聞き、おにぎりを買って朝食をとったローソンの裏手の住宅街があの事件の現場で、総合体育館にも近い地区が駆除現場だった。あんな町中で…と思った。次の松前町の大館(比高30mくらいの裏山)に登る時、教育委員会の方に「熊が出るので。後は自己責任で…」と言われた。実際に森の木々は熊の爪だらけだった(おお、怖っ!)。これは以後、もっと注意して行動しなくてはならないと肝に命じる。その後、私は松前から日本海沿いを北上して上ノ国町で初めての車中泊。その後、江差町を経てメイクイーン発祥の地・厚沢部町泊。ここで最大のピンチが…上ノ国町にある石崎にある比石館跡でヒグマの糞を踏んづけ、知らぬ間に巣の跡にも入ってしまったのだ。


これが証拠写真。石崎港の真上にある比石館…左右が断崖で逃げ場のない細い岬だったので、あの状況で熊が出て来たら一巻の終わりだった。ここは約25m直下に小さな港があって、下から人の声も聞こえてくる。こんな人間の集まる近くに熊は住んでいる!orいた?のである。お留守でよかったよ…。さて、ブルー・デモン号は真っ青な海岸線を北上し、せたな町へ(おばあちゃんが経営する海岸の民宿にただ一人の客として宿泊)。ここから進路を東に取り渡島半島を横断する。その途中、昨年のコラムで触れた今金町がある。ここの総合体育館で、1976年8月21日、極道コンビがテッド・デビアス&タンク・パットンを相手にメインでアジア・タッグの防衛戦をやって60分ドロー、セミは馬場vsボボ・ブラジルだったと書いたのを憶えている方いますか。現在の人口4400人足らずのジャガイモ畑と酪農のこの町で、76年当時は人口約9200人だったとはいえ、何でタイトルマッチが行われたのか…改めて現場へ行ってみて首を傾げた。これも小鹿さん絡みの興行なのだろうか…。今度、小鹿さんにお会いしたら聞いてみよう。今金の総合体育館は建て替えたらしいので立ち寄らずに先を急ぐ。そこから噴火湾の長万部へ出て、世界的に極めて珍しいという二股のラジウム温泉に入って、再び日本海側の島牧へ出る。渡島半島横断往復だ。そして弁慶岬を経て寿都、雷電海岸から岩内町に到着する。ここ岩内は前頭8枚目で今場所、誰よりも早く勝ち越した一山本の出身地。一山本は前述の熊害の福島町の町役場勤務から相撲取りの転身した異例の脱サラ力士だ。函館を出て一週間ぶり…岩内は人口1万人強の大きな町である。ここに連泊して美味しい寿司を食いながら天候の回復を待つ。この町にプロレスが初めてやって来たのは1969年11月6日のこと。国際プロレス『IWAワールド・タッグ挑戦シリーズ』の第12戦だ。その69年当時の人口は2万5000人を超えていたという。それでもこのクラスの町が60年代に体育館を持っていたということは水産業等で裕福だったのかもしれない。現在、その町民体育館は補強工事中であった。

メインはサンダー杉山&ストロング小林&大磯武vsイアン・キャンベル&ブルーノ・アーリントン&シャチ横内の6人タッグ。セミはゴージャス・ジョージ・ジュニア&バディ・コルトvsエルマンソー兄弟というマニアックな好カードだった。2度目の岩内大会も国際だった。それが1972年5月10日。場所は町民体育館ではなく、町営のグラウンドだった。『ワールド選抜シリーズ』の第3戦でメインは小林&木村vsモンスター・ロシモフ&イワン・バイデン。ジョージ・ゴーディエンコvs寺西というカードもあった。「町営グラウンドは昔からずっと岩内運動公園のあそこのままですよ」と清寿司支店の大将がそう教えてくれた。外野の背景は翌日向かうニセコの山並みであった。

1978年1月23日の岩内へ来たのは全日本。でも会場は町立小学校体育館だった。メインは鶴田&ロッキー羽田vsマーク・ルーイン&キム・ドク。セミが馬場vsキング・イヤウケア。ちなみにこの中央小学校は2013年に閉校になっている。80年7月19日がまた国際。岩内町中央体育館。記録ではそうなっているが、でも「中央」とあるので、恐らくこれも小学校の体育館であったのではないだろうか。メインは木村&井上&浜口vsジプシー・ジョー&スパイク・ヒューバー&ランディ・タイラー。セミが大木vsロッキー・ブリューワー。この一週間後から「幻のシリーズ」(第2次ビッグ・サマー・シリーズ)が始まる。

私は岩内をベースのニセコ、羊蹄山を一周し、積丹半島をグルッと周った。その時のこと…女郎子岩という絶壁の海岸線にある知る人ぞ知る奇岩を観に行った。ここは49年前にアタックして到達できなかった秘境?で、今回はそのリベンジであった。山を突っ切って海岸線へ辿り着く新しい散策路が出来ていたので40分かけて憧れの現場へ到着。ドローンで女郎子岩を舐めるように撮影した後、誰一人会うことのない道を戻る…すると、ナナ何んと、湿地の遊歩道上に熊の足跡を発見! テカリ方からして新しい?足跡だった。これは近くにいるかもしれないと、熊鈴を鳴らし、スマホのスピーカーで音楽を流しながらそそくさと退散した。さて積丹の後は小樽に泊まった。小樽に泊まるのは公私とも初めてだ。札幌との距離が約40キロしかない。どうしても札幌中島体育センターでビッグマッチがあるので、10万人の港湾都市とはいえ、仕事で来る機会がなかった(札幌から寿司だけ食べに来たことはあるが…)。さっそく花園の小樽公園内にある市の総合体育館へ行ってみる。商工会議所の陳情から10年後の1972年に着工し、完成は74年だったようだ。どっしりした大きい体育館で、未だ現役バリバリである。


調べた限りにおいて小樽で日本プロレスは試合をしてないようだ。最初にこの都市へやって来たのはやっぱり国際だった。1970年8月6日だから、まだ体育館が無かったので、花園公園グラウンドで試合をしている。1948年開場の同球場はプロ野球の公式戦が8試合行われた(最初が50年の巨人vs広島、最後が53年の大映スターズvs東急フライヤーズ)。桜ヶ丘球場という名で今も現役だ。この球場で70年夏に国際が打った興行のメインは杉山&小林&大磯vsドクター・デス&レス・ウォルフ&パンチョ・ロザリオの6人タッグだった。総合体育館が完成して最初に使用したのは全日本であった。74年8月24日、『サマー・アクション・シリーズ2』の第13戦。馬場&高千穂vsドリー・ファンク・ジュニア&ディック・スレイターがメインで、セミは鶴田vsジョニー・ウェーバーだった。その次が新日本。同年10月30日、『闘魂シリーズ第2弾』の第5戦で、メインは猪木&柴田勝久vsレッド・ピンバネール&ロベルト・ソト。セミが坂口vsポークチョップ・チョイス。札幌で猪木vsアーニー・ラッドのNWF戦があったのは、その2日後のことである。国際は75年4月、76年7月の2回のみ。最初に小樽でビッグマッチ(TVマッチ)を打ったのは全日本だった。75年8月、76年5月を経て77年9月7日の小樽で馬場がビル・ロビンソンを相手にPWFの防衛戦をやっている。

さらに全日本は78年10月25日の小樽では馬場&鶴田vsボボ・ブラジル&アブドーラ・ザ・ブッチャーのインター・タッグを決行。それに対して新日本は77年7月の後、79年11月8日に小樽で重要な試合をしている。メインが猪木vsダスティ・ローデスのドリームマッチ(WWF王座挑戦者決定戦)。セミで坂口がパット・パターソンからWWF北米ヘビー級王座を奪取した。営業部長だった大塚直樹氏によれば新日本は小樽の興行は270万円で太平洋プロダクションに売っている。この後、新日本は80年7月、82年7月、83年7月と夏に来るのが定番になっていたが、大塚氏が退社後の84年は札幌雪祭りの前に小樽大会があった。86年は再び7月に戻り、88年と89年は6月開催だった。

一方の全日本は新日本ほど使用回数多くないが、81年10月27日、鶴田と髪の伸びたアレックス・スミルノフとのUNヘビー級選手権が行われている。85年1月30日の『激突!オールスターウォーズ』第25戦では、この日から特別参加の初来日“帝王”ジェリー・ローラーとザ・ブギウギ・ジミー・バリアントを、全日本に頼まれて千歳空港から小樽の会場まで同行したのはゴングの小佐野景浩記者だった。「ローラーは夫人同伴でした。千歳空港から小樽までタクシーですよ。試合時間に間に合いそうにないので、ガソリンスタンドから会場に電話して試合順を変えてもらったか、前の試合を延ばしてもらった記憶があります」って苦笑い。ローラーの千歳空港着が17時15分着。雪の中、小樽に着いたのが19時30分だった。ちなみにローラーは全11試合中の8試合目なので試合をずらした様子はない。カードはローラー&バリアントvsキラー・カーン&永源。その前の試合が三沢タイガー&マジック・ドラゴンvsペロ・アグアヨ&ブラソ・デ・オロだった。12分13秒の試合だから決して引き延ばしたようなタイムではなさそうだ。「その年の夏にアメリカ取材でテネシーへ行った時、ローラーは本当にスーパーの付くキングだったし、バリアントもザ・ブギウギになってベビーに変身してテネシーでブレイクした大スターでした。さすがに車中は緊張しましたよ」。

小樽というと、この小佐野君のローラー話が頭をよぎる。私も五反田の『リベラ』で北海道帰りのローラー夫婦と同席している。ステーキを食べ、ワインを一緒に飲みながら、いろんな手品を見せてくれたりとても愉快な人だった。小佐野くんも私も、貴重な経験が出来たと思う。さて小樽まで行った私…次はどっちへハンドルを切ったのでしょうか。次へ行った「昭和の体育館」は何処か。次週をお楽しみに…。
